Oct 26, 2009

結婚式の章では、シャンデリア。

以前の自分は高校時代の友人の結婚式に参加することができます。そこに結婚式の章では、非常に良い大きなシャンデリアがとても美しく輝いていました。ここに結婚式ジャンエソイシャンデリアが自分には一番印象に残って会場の様子でした。シャンデリアの光の下で、高校時代の友人は非常に幸せしていました。
シャンデリアという言葉を知っていると言う人も多いと思います。また、実際に見たことがあると言う人も多いでしょう。シャンデリアは、ガラスなどで作られたきらびやかな照明のことです。日本ではあまり多くはありませんが、外国に行けば、一般家庭でも見ることができます。古い宮殿などでは非常に高価なシャンデリアが飾ってあるのも珍しくないそうです。
 作家、村上龍氏の代表作の1つ『ラブ&ポップ』の電子書籍版がTSUTAYA GALAPAGOSに登場した。G2010を立ち上げ電子書籍の世界に飛び込んだ村上氏は今、この新しいメディアに対してどのような想いを抱いているのか。気鋭のジャーナリスト、まつもとあつしによる村上氏へのロングインタビューの後編でそれが明らかになる。

●制作のワークフローにはどんな変化が?

―― 今ご自身の作品では、リッチ化を重要な要素として打ち出しておられますが、それを作る際のワークフローには変化がありましたか? これまでのような紙の本を書くのとはまったく異なっていたりするのでしょうか?

村上龍 うーん……映画が台本・脚本がないと、各パートが準備できないのと同じで、リッチコンテンツの小説でもやっぱり、テキストが一番ベースになるんですよね。

―― 映画作りと似ている?

村上龍 いや、まあ、似てなくもないですけど。映画はもうちょっと、やっぱりこう、組み合わせるアイテムが多いので。例えば、動画も入るし、写真も入れられるし、イラストも音楽も、音も入りますよっていうのが、もちろんベースにあるんです。

 その中にあるテキスト――例えば、この『ラブ&ボップ』というテキストがあった場合に、これをさまざまある要素の可能性の中で、どれを利用して作っていくかと吟味するというのが、まず最初のステップですよね。

 だから、『ラブ&ボップ』という小説があって、それを今度は誰か新たに、最近人気のあるどこかのJ-POPの人に頼むのかとか、そういうことではないと考えています。

 それは映画のやり方なんですよね。映画化するときは、例えば『ラブ&ボップ』という曲を作ってもらうと。そういうもんですけど、電子書籍の場合はそうじゃない。『ラブ&ボップ』が持っている世界を、どういう要素の組み合わせでリッチコンテンツ化できるかを考える。そうすることで、もっと『ラブ&ボップ』が持っている本質みたいなものを伝えられるかなと。

 だから、例えばこの作品では音楽はできるだけ主張がないものを使っています。章扉で流れる渋谷の雑踏のガヤといったSEは新たに作っていたりもしますが。

―― 『ラブ&ポップ』では、商品が文中にざーっと羅列されたりとか、雑踏の「音」を「文字」として表現されています。その情報量に圧倒されるわけですが、その情報量とSEは非常に相性がいいなとわたしも感じました。そういった音を本文の該当個所で流れるようにしようという風には考えなかったのでしょうか?

村上龍 そこまでやってしまうと、Too muchかなと思うんですよね。僕が一番やっちゃいけないなと思うのは、例えば小説の中で、「村上は彼女の前でワインの栓を開けた」とかっていうと、ポンッっていう音がして。

 それはちょっと、ねえ。そういうことやってると、駄目になると思うんですよね。それがいい場合もあるかもしれませんけども。

―― そうすると、狙った効果としては、章扉のところで街の中の音を聞いて、イメージを持ってもらうと、でも、そこから1頁開くと、もう文字の世界に入っていく。

村上龍 本文には女の子の写真を配置していますけどね。あの女の子もですね、普通なら4人の女子高生の――例えばオスカーさんと組んで、トップクラスのモデルをこう、配役を決めてですね、ちょっとこうハイソックスを入ってもらって撮ったりするんですけれど――そうじゃなくて、主人公の裕美は、いってみれば代表・象徴なわけです。あのころの女子高生、17歳。だから、たくさん居たほうがいいと思ったんですよ。

 要するに、もちろん「裕美」は個性のある1人の人間なんだけど、やはり象徴なんで、17歳を中心としたモデルさんたちが――本当は許せば、1000人ぐらい欲しかったんですけど、さすがのオスカーもですね、1000人は無理だったんで、100人の写真を提供していただいて。

―― 特定の容姿とかイメージに縛られない。

村上龍 もちろん、主役として想定した子はいるんですけど。僕は表紙がすごく気に入っていて。その子が小さいころの写真を提供してくれたので、そちらも採用しています。

―― もともとのテキストを書いている作業環境が変わった、ということはありますか?

村上龍 小説と変わらないですね。ただ、電子書籍専用のコンテンツというのは、われわれはまだ作っていないので。それは近々作りたいなと思います。

 小説、特に長編小説って、やっぱり、テキストを書くだけでもけっこうキツいですからね。連載ならば100回ぐらいに渡りますから。

 電子書籍に本当に向いているのは、よくデモで使われている『不思議の国のアリス』とか、ちょっと動画が入って、音が入ったりする、絵本みたいなものがすごく合っているはずです。それをオリジナルで作りたいなと思っています。全然時間がなくてまだできていませんけど。

―― 逆にその、今、これはご自身の作品以外でもいいんですけど。電子書籍を俯瞰されていて、見えてきた問題点というか。もうちょっとこうあるべきだっていうような点はありますか?

村上龍 いや、まだ黎明(れいめい)期だから、分からないですね。電子書籍が紙の本に取って代わるかどうかも分かりません。ただ、僕は紙の本は残ると思うんですけど。電子書籍がパーセンテージも勢力も影響力も増やしていくのは、間違いないと考えています。

―― そこにしっかりこう、対応していくべきである。

村上龍 うーん。まあ、僕はあんまり、他人のことはよく分かんないです。ただ僕としては、そういったマーケット的なことではなくて、個人的な表現として、非常に興味のあるツールというか、メディアと捉えています。

 とにかく『歌うクジラ』を作っている時の高揚感というか。彼らとやっているときの充実感というのは、やっぱり、ほかではなかなかなかったもんですから。

―― 今、マーケットというお話も出てきましたが、ちょっと作品から離れて、販売戦略といったようなところの話もうかがっていければと思うんですけれども。例えば、昨日(取材時)Appleが為替のレートを反映して、本も含めたすべてのアプリを一律で安くして、混乱を巻き起こしたんですが、そういったプラットフォームでの商売に対して、どういうふうに感じられていますか? 出版社や書店の流通とは、まったく違うプラットフォームだと思うんですけれども。

村上龍 いろいろ言う人はいますけど、僕はあんまり、考えたことないですね。そういうこと考える暇があったら、いい作品を作ったほうがいい。

●なぜGALAPAGOSだったのか?

―― なるほど。ただプラットフォームという意味では今回、iPad、iPhone、Androidに加えて、GALAPAGOSにも展開されたわけですね。

村上龍  基本的には船山君(G2010代表の船山浩平氏)にそういった戦略は考えてもらっていますが、その過程でGALAPAGOSも見せてもらって、じゃあ、これでいこうと。

―― 実際に実機でデモを作られて、それを見て、これならいけると。

村上龍 はい。

―― 国産のプラットフォームでもあるGALAPAGOSに対する印象はいかがでしたか?

村上龍 「シャープ」ですからね。いやそれはもう、「シャープ」ってだけで。僕らの世代ではまだ、やはり確固としたイメージがありますから。

―― 特にどういうイメージなんですか。

村上龍 いやあの、何ていうのかな。正直、そういった、ソニーとかパナソニックのような大きな企業とは違う位置にシャープはいたわけです。とにかく、シャープ好きというのが、いてですね。僕の仲間にも。

―― わたしの周りではソニー好きというのは聞くんですけど、シャープ好きというのは……。

村上龍 いや、あのね。いるんですよ。ほんとにいるんです。

―― そうですか。へええ。

村上龍 シャープ好きだっていう。いかにもシャープだっていうような、個性のあるいろんな、電機製品を作ってきたところだし。だから、そういったイメージがありまして。

―― 今だと、亀山ブランドっていうイメージがありますけど。昔からその……。

村上龍 ちょっと、変わっているんだけど、技術屋さんのプライドみたいなものが感じ取れますよね。あとこう、これはシャープさんから見れば違うかもしれないけど、あんまりこう、社会に迎合しないというかですねなんかこう、硬派みたいな感じ。

―― 独自色がある。

村上龍 そうです、そうです。

―― ありますよね。ほんとにあの、GALAPAGOSという名前もわたし、聞いたときには、もう本当にびっくりしたので。

村上龍 そうだよね。

―― それまでは、まあ、どちらかというと、やゆする言い方で使われていた言葉を、そのまま商品名に採用するというのは、なかなか。これはもう、本当にお世辞抜きで、ガッツがあるなと思ったんです。

村上龍 びっくりしましたね。

―― 先ほどiPadを最初に見たときの衝撃をお話し頂きましたが、逆にGALAPAGOSに限らず、国内勢にもう少し、こうなった方がいいのにといった要望があったりはしますか?

村上龍 僕はハードにはあんまり興味ないんです。デバイスの特質に合わせてやればいいなと思っているんですよ。だから、もうちょっとこうしてほしいとかいうのは、あまりないです。

●変化とどう向き合うか?

―― 昨年は電子書籍元年ということで、出版社だけでなく、印刷会社、シャープのような電機メーカーなどあらゆるプレイヤーが、非常に過剰に期待し、反応をした1年間でした。それに比べると震災の影響もあり、今年は落ち着いた空気の中に電子書籍はあると感じています。そういったいわゆる「元年」から今年に至るまでの現状というのは、先生はどういうふうにご覧になってますでしょうか。

村上龍 そういうことは、まったく考えてないですね、僕は。気になったりもしないです。

 付き合いのある編集者はたくさんいるので、去年みたいな熱気とか、あるいは、警戒心とかは、確かにだいぶ弱まっているかもしれないなとは感じています。ただ、電子書籍が持つインパクトというのは、弱まってないと思いますよ。

―― インパクトが弱まっていないというのは、重要な指摘ですね。

村上龍 ええ。

―― 電子書籍の浸透を受けて、今後、作家自身、作家像が、変わっていくということは、あり得るんでしょうか。

村上龍 それは、ないでしょうね。

 逆にあの人は紙にしか書かないみたいだとか、電子書籍界から、なかなかいい新人が出てきたよとかいうようなことが、普通のことになっちゃって、紙と電子書籍の比率は、変わってくるかもしれませんけど、共存するという状態は、続いていくと思うんですよね。

 もっともっと、電子書籍が普通のもの、普通のメディアになっていくと思いますよ。

―― 作品、例えば昨日(取材時)まさに、芥川賞の選考会でもあったりしたんですけども、新しく出てくる作品をご覧になっていて、例えば電子書籍も手前には、ケータイ小説があったりしたわけなんですけど。作家、あるいは作品が新しいデバイスやメディアが登場するに伴って、変わってきたなとか、そういうことを感じられることっていうのは、ありますか?

村上龍 ないですね。

 携帯に向いた小説って、あると思うんですけどね。例えば画面が小さいから、文章が短いとか。でも電子書籍は、あんまりそういった制約はないですから。あまり感じないですね。

―― 用意していた最後の質問も、「グーテンベルク以来の文字文化の革命と称した電子書籍について、各方面への提言」という質問項目になっているんですけれども。

村上龍 提言は、ないですよ。ただ、グーテンベルク以来の革命だっていう認識は、出版に関わる人は持ってた方が有利だと思うんですよね。合理的だと思うんですよ。

―― 合理的。

村上龍 はい。それで、記者会見で言ったことですけど。ということは、要するに、変化が必ず起こってくるわけです。出版業界に。あるいは出版業界じゃなくて、こういうデバイスを作るメーカーを含めた、広い領域で変化が起こってくるかもしれません。

 その変化というのは、日本人の場合「外側から来る」という前提の下に、考えたりするんですよね。黒船が来る、みたいな。

―― まさに黒船っていう表現が、「外から押しつけられる変化」というニュアンスを含んでいますよね。

村上龍 そういった変化というのは、「その内部、中にいて、作り出せるもの」なんですよね。それが僕は『歌うクジラ』をやって、一番感じたことなんです。

 だから、デバイスを作るメーカーから、テキストとか、コンテンツを提供する、いわゆるクリエーターまでがね、「一体どうなるんだろう」ではなくて、こういう変化の中で、自分は何をすれば、一番「わくわくどきどき」できるだろうというような、考え方で、電子書籍という新しいメディアに対するべきだと思います。

―― どうなるんだろうじゃなくて、どうしてやろうと。

村上龍 今は「どうなるんだろう」っていうのばかりなんですよね。

―― 確かに、確かに。わたしも今、質問がそういう繰り言になってしまっていて、反省しています(笑)。

村上龍 それはまあ、インタビューアーとしては、しょうがないです。

―― ありがとうございます。いずれにせよ、そう捉えたほうが、合理的であるというのは、非常に大きなメッセージだと感じました。

 去年は各プレーヤーとも、恐怖や不安に突き動かされて、業界でも、いろんな動きがあったわけですが、端的にいえばAmazonに対する守りを固めるという動きがほとんどのように思えます。

 そこで「何を作っていくか」というような、先生が仰ったような視点というのは、多くの場合抜け落ちてしまっています。今後は何を作っていくか、どうしていってやろうかという点に光が当てられるべきだと感じました。

 では、最後に先生からこれは言っておきたいみたいなことがあれば。

村上龍 ぜひ『ラブ&ボップ』を電子版で体験してほしいですね。

 オスカーという事務所に所属する10代の女の子が、100人も集まる機会ってなかなかないと思うんですよ。その要素と『ラブ&ボップ』っていう小説の本質が本当にフィットしたという自負があります。まずは手に取って眺めてほしいです。

―― 最初に申し上げたように、「ラブ&ポップ」を読み返したとき、15年前と今の様子とあまりにも違いすぎるので目眩を覚えました。ただもしかするとそこから、何か、希望の1つの形を取り出せるかもしれません。

村上龍 援交するおじさんに?

―― 援交できるおじさんを希望と呼んでしまうと、語弊がありますが(笑)。

村上龍 確かに、経済的には縮小が進んで、より閉塞感が強くなっていると僕は思うんですけど。本質的には、変わってないんですよね。経済的にいうと、本来変わらなければいけないところは、ずっと残したまま、ずるずるずるずる……。これは民間ではなくて、主に行政とか政府の責任ですけど。

 変われてないことが問題だから。逆に変わってない部分はたくさんあると思うんですよね。そんな中で、「ラブ&ポップ」では風俗とか、おじさんの経済情況は変わっているということは読み取れるかもません。

―― ぜひでは、またその辺りに切り込んだ新作にも期待しています。

村上龍 はい、ありがとうございます。

―― 今日はお時間をいただきまして、ありがとうございました。


【まつもとあつし,eBook USER】
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